「かあさん、小学校である区の水泳の記録会に出てもいい?」と、娘が。
幼稚園に行くのをずっと楽しみに。
幼稚園から渡された『たのしいにゅうえん』という絵本。
毎晩毎晩、ベッドで一緒に。
「『おはよう』っていえばみんなとなかよくなれるの?」
うん。
「もちものはじぶんのマークにしまうの?」
うん、マークなんだろうね。
「みんなでたべるとおべんとうっておいしいの?」
うん、いちばんはじめのおべんとうはなににしようか。
ひとつひとつ確かめるように。
毎晩毎晩、入園の前日まで。
白いブラウスに、グレーのジャンパースカート
「これがいい」と選んだ、フリルがついた靴下。
髪の毛を二つに結って。
あとはスモックを着るだけ。
そのとき突然。
フローリングの床にぺたんと座り。
ほろほろほろとなみだをこぼし。
堰を切ったようにしゃくりあげた。
入園式に行くのを諦めよう、そう思ったとき。
右腕でなみだを拭い
「もうだいじょうぶ」と言った。
「あのね、先生が記録会に出てみたらって。いい?お弁当いるんだけど」
うん、いいよ。お弁当なににしようか。
「唐揚げ」
了解。
『泣き虫さん』は、あの日に置いてきたんだ、きっと。
おいしいお弁当作るから。
きっと大丈夫。